- 第16回 貝畑政徳氏 面白法人カヤック取締役CTO

- 今回は、面白法人カヤックのCTOを努める貝畑政徳さんにお話をお聞きしました。貝畑さんは、面白法人カヤックと関連会社の株式会社クーピーの技術のリーダーを兼任されており、開発責任者として、カヤックの展開する数々のサービスの技術面を担当しています。今回は冬晴れの鎌倉にお邪魔し、話題になっているカヤックのオフィスと12月にオープンしたばかりのカフェ「DONBURI CAFE DINING bowls」でお話をお聞きしました。 http://bowls-cafe.jp/ ※取材日は、2007年12月です。所属や役職などは当時のまま掲載しております。
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PCとの出会いは?
川井 貝畑さん、こんにちは。本日は「Webエンジニアの武勇伝」ということでお願いいたします。貝畑 こちらこそ。よろしくお願いいたします。
川井 まずはお決まりなんですが、PCとの出会いからお聞きしたいんですが。貝畑 パソコンに本当に触れたのは中学2年生のときで、たまたま友達の家にパソコンがあって、「これはなんだ?」という感じでした。ファミコン世代ですし、ゲームはやっていたし、ゲームを作りたいという欲求はその頃からあったんですが、パソコンだったら簡単ゲームなら作れるよと友達に実演してもらって、これはすごい!って衝撃を受けました。自分でやりたいゲームは自分で作った方が面白いと思いパソコンに興味を持ち始めたんです。
川井 なるほど。貝畑 趣味程度に遊んでいた感じですね。本格的に使い始めたのは大学に入ってからです。SFC(慶應藤沢キャンパス)に入って、1人1台、パソコンを持ったことがきっかけで、あらゆる情報をパソコンで整理するようになり、開発も始めました。人に比べるとスタートは遅いと思います。
川井 でも好きだったり、素養みたいなものはあったんでしょうね。貝畑 はい。理系だったとは思います。
川井 学生時代は授業以外ではパソコンは触っていたんですか?貝畑 Webの開発の仕事もしていましたね。普通の同学年の人よりはWebに触れるのが早い環境でしたので、いち早くHTMLだとか、Webのサービスやプログラムを身につけて、Web開発会社と同じくらいのスキルはあったので、個人で普通に仕事を請けてこなしていました。そのため、会社を始めるときも、インターネットサービスを事業にしました。
川井 3人がお知り合いになられたのは、大学の学部が一緒だったからという感じですか?貝畑 柳澤は高校の同級生です麻雀友達だったんですが「こいつは只者じゃないな」と感じていて、起業とは決めていませんでしたが何か一緒にしようという口約束はしていましたね。柳澤と同じ大学に進んで、そこで久場に出会いました。久場はパソコンができるとか何ができるとかじゃなかったんですが、とても人間的魅力を感じて仲間に引き込んだ感じです。
川井 そうなんですか。柳澤さんとは、高校の同級生でしたか。卒業後はそれぞれどうされていたんですか?貝畑 3人ばらばらでした。僕は大学院に進学して、柳澤はソニーミュージック・エンタテインメント、そして久場はアメリカで放浪。絨毯を売ってたみたいなんですけどね(笑)
川井 アメリカで絨毯ですか(笑)貝畑 5年くらい経ったら、会社を作ろうみたいな話を大学時代にしていたんですが、実際には僕が2年で大学院を卒業して、インターネットも隆盛していたので、もう何か始めた方がいいって思って、柳澤にはソニーを辞めてもらって、久場をアメリカから呼び戻して、起業したという経緯なんです。
川井 早いですね。貝畑 そうですね。当時Web制作会社もあまりなかったので、早い方だったと思います。久場はアメリカから帰ってきた当時は携帯電話すら知らなかったんですよ。
川井 何年くらいになられるんですか?貝畑 今年で10年です。節目になるので、イベントをやろうと思っています。
川井 最初は受託からですか?貝畑 若い頃って夢がありますよね。インターネットって個人でいろいろな情報を発信できるから魅力的だったし、ネットで何かしようということだけは決まっていたんです。でも最初はコネもないし、仕事もないし、お金もない。なので受託をしてみようってことで、得意先の代理店をつくって始めたんです。その頃は3人一緒に住んでいて、昼は上の部屋で仕事、夜は一緒に寝てみたいな生活を1年くらいしていました。人も増えて、オフィスも高田馬場から自由ヶ丘と移って、今は鎌倉に本社があるっていう感じです。
川井 かなりご苦労されてきたんですね。貝畑 実際に人を増やし始めたのは3年前くらいなんですよ。それまでは役員3人とアルバイトくらいだったんです。起業から3年目に別会社として立ち上げたクーピーという受託を専門とした制作会社のほうは人を増やしていましたが、カヤック本体はアイデアありきで好きなようにつくりたいというのがあり、人を増やさなかったんですけど、3人でできることは限られてきて、カヤックも人を増やすことに決めました。今は40人くらいになりました。
川井 かなり急激に増えていますね。「面白法人」というコンセプトはいつぐらいからなんでしょうか?貝畑 「面白法人」という言葉は、会社を設立するときに決めたんです。会社にも人格があったほうがいいですし、自分たちが面白いことをやりたいと思っていたので「面白法人」という名前にしました。そして経営理念は毎年見直しています。会社も人間と同じように進化していくものですし、経営理念が全社員に浸透している会社はやっぱり強いと思います。
川井 なるほど。そうかもしれませんね。柳澤さんが、先日に講演で言ってましたが、「経営理念」でググルと一番上に出てくるんですよね?貝畑 はい。今の経営理念は、「つくる人を増やす」です。つくる人を増やすだけでなく、僕たちもつくり続けています。その典型的な行事として1年目からやっている「777プロジェクト」があります。7月7日に7つのサービスを同時にリリースするっていうプロジェクトです。受託の仕事をしていると自分たちのサービスをつくることが疎かになりがちです。そこで、6月をフルで空けておいて、7つを一気につくっていたのです。1年に7つ作れば7年で49個になります。
川井 7つ同時はすごいですね。貝畑 当時は、7つも同時っていうのは画期的でしたね。まあ、今でもあまりないと思いますけどね。「なんだ、それ?」って言って業界の人がみんな注目するんですよね。毎年続けると、「今年は何をやるのかな」とか「今年もやったね」って言われるようになっていきました。
川井 なるほど。貝畑 その結果、「カヤック主導で何か面白いものを作ってください」というような仕事が入ってくるようになってきました。リソースをお借りして、こちらでサービスを考えて、売上シェアするレベニューモデルによる提携サービスも生まれました。
川井 それが、現在のBM11のもとになっているんですね。貝畑 確かにBM11につながっていますね。
川井 1年に77個でしたっけ?貝畑 そうです。昨年は77個サービスを達成して、達成記念として年末年始にかけて売出しセールをしました。今年は88個に挑戦します。そして他企業のラボ部門の請負事業もスタートしたいと思います。その企業のノウハウや資産を、WEBという技術を組み合わせて有効活用する方法をBM11が研究、実験して提供するという事業モデルを考えています。アイデアも提供しますブレストにも参加します。それが面白ければいっしょにつくりましょう、というスタンスです。 BM11で2ヶ月前に「元気玉」というサービスをリリースしました。「元気玉」は、みんなから元気を集めて相手にぶつける某漫画の必殺技です。このサービスは、BM11にアイデアを依頼できるサイトなんです。たとえば「こういうサービスを作るんだけど、何かキラーコンテンツを考えて欲しい」と依頼されると、BM11のメンバーがひとり1つ計11個のアイデアを1週間以内に返します。アイデアを出す側としてはハードルは高いのですが、1アイデア100円で、そんなに高額でもなく人助けにもなる。そしてラボのメンバーのブレスト力もUPするという、いいコラボレーションだと思うんです。
川井 そのアイデアを生み出す源泉はどのあたりにあるんでしょうか。採用やマネジメント手法に特徴があるんでしょうか?貝畑 まず1つは、「面白いもの」と「新しいもの」に価値を置いています。受託にしても、どこかに新しいアイデアを出さないといけない使命感がまずあります。鎌倉にオフィスを構えているのも、自然に囲まれている方がアイデアが浮かびやすいというのが真理としてあるだろうと考えたためでもあります。役員が来たくて来たっていうのが一番の理由ですけどね。
川井 確かに自然がいっぱいですもんね。貝畑 シリコンバレーでもクリエイティブな企業がだいたい郊外にあることも、何か関係あるんだろうなと思ってやってみたのです。
川井 なるほど。貝畑 アイデアを出すことがカヤックの特徴になっているので、社員教育にもそれがつながっています。ブレストにもほとんどの社員を参加させています。技術者にしてもデザイナーにしても。アイデアを出す過程で、カヤックの経営理念だったり考え方が伝わっていくんですね。例えば、社員が好き勝手なアイデアを出すんですが、「それは新しくない」とか「それはカヤック的じゃない」「カヤックの経営理念に反している」みたいなやりとりをしながら学んでいく。全員がいいアイデアを出せるわけじゃないんですけど、そういう場にいてもらうことが教育だったりもしますね。
川井 それはいい社員教育ですね。貝畑 あとはブレストの基本ではありますが、アイデアを出す人を否定しないことを心がけています。本当にくだらないアイデアしか出さない社員がいるんですけど、とりあえず「いいね」と言うようにしているんです。そうすると、その社員は喜んで、どんどん次のアイデアを出すんですよ。ずーっとくだらないアイデアしか出さないんですけど、それでも続けていると突然、ブレイクすることがあるんです。1人、そういう社員がいたんですが、今はとてもできる男になっています。
川井 マネジメントの勝利ですね。貝畑 また技術陣には、常に新しい技術を取り入れて開発してほしいって伝えています。普通、会社って使い慣れたものを使ったり、フレームワークみたいな1つのアーキテクトというか流れを作って、それを使いまわすことで効率化していくと思うんですが、カヤックではまったく逆で、常に新しいことにチャレンジしていくということを推奨していて、それが新しい技術の習得だったり技術者の好奇心を満たすことにもつながっています。技術者って常に新しいものを求めていますよね。例えば一度、ECサイトを作って、もう一度ECサイトを作ろうっていったときに、当然、スキルがあがっているから効率的ではあるとは思うんですが、あまり刺激ってないと思うんですよね。少なくとも僕はそうでしたからね。であれば、全然違う言語で作ってみたりとか見たこともないモジュールを組み込んでみたりとかっていうことをやることで、開発効率が下がったり、バグでも出るとは思うんですが、それでプログラマのスキルやモチベーションが上がったりとか、会社としての知見になって次に生かせるってところを重要視しています。
川井 なるほど。開発にも経営理念が生きているんですね。貝畑 そうです。他の会社では、自分たちでフレームワークを作ったりしていますが、カヤックでは、各プログラマなりデザイナーが自分の方法論でトライしていって、その情報を共有してブラッシュアップするという形をとっています。
川井 なるほど。すると技術的にはありとあらゆるものを試している感じなんですか?貝畑 社員の興味の赴くままという感じですね。僕はCTOなんですけど、僕よりも開発ができる社員がたくさんいます。個人でやっていたけど、本当にすごいプラグラムを書いていたような人たちも集まってきていて、僕の仕事は彼らが自由に開発できる環境を作ることと、責任をとることなんです。いつも社員には「バグは個性だ」って言ってるんです。「バクが出るのはしょうがない。それは挑戦した結果。とにかく新しいことにトライしてほしい」ということを言い続けています。挑戦して成功するか失敗するか分からないけど、それをすること自体がその人の成長につながると思うので、基本的に推奨派ですね。もちろんクライアントワークでバグがあるのは推奨できないので、自社サービスでトライして有効だったものを、受託に活かすことになります。
川井 チャレンジャブルでいいですね。貝畑 クーピーの方は、受託ですから自社でPHPのフレームワークを開発しています。カヤックが新しいことに挑戦して、クーピーは使い慣れた技術を使って効率よくまわしていく。得られるものも違うので、社員も相互交流させるんですよ。社員のスキルとかやりたいこと、そしてその社員の人間的レベルで会社やポジションを変えたりしています。
川井 カヤックでは、今はどんな技術に取り組んでいるんでしょうか?貝畑 今は、Perl関係、Ruby on Rails、基本的な言語はやっていますね。それを使って新しいライブラリーとかモジュールを作っている業界では有名な子がいるんですが、その子が参加しているサービスで、みんなの開発したレポジトリを公開するというサービスがあるんですけど、そこに賛同するプログラマが集まってきて、みんな自分の開発したレポジトリを公開しているんです。カヤックのラボで作った面白いツールなんかのソースも公開していますよ。
川井 貝畑さんの業務は、ほとんどマネジメントという感じですか?貝畑 いえ、開発もしてますよ。開発をしていないとアイデアが出なくなっちゃうんです。
川井 そうでしたか。それは忙しいわけですね。貝畑 開発者には2通りいると思っているんですよ。技術から入っていく人と、作りたいものから入っていく人。僕はアイデア先行型なんですよ。アイデアが先に浮かんで、こういうWebサービスを作ろうってなったとき、それを開発するために必要な技術だけを身につけるっていうスタンスです。PHPでやるべきなのか、Perlでやるべきなのか、Javaなのか、相手が先にあって、それに必要なことだけを学んでやっちゃうんです。技術者が技術を学ぶときには、そっちの方が楽しいんじゃないかって思うんですよね。一から参考書を読んでいく人もいるんですけど、そのこと自体はアイデア力につながっていかないので、これやってっていえばきちんとできる人間になるんですけど、何かビジネスモデルを考えてっていうとそこまでいかないと思っているんです。うちの社員もアイデア先行型が多くて、作っているものとか、好きなゲームをサポートするツールが思い浮かんで、そのツールを作っちゃったみたいな人が多いんですよね。ブログなんか見ていても、技術のchipsとかを載せているんじゃなくて、作ったものを載せているんですよね。その作る過程で得たノウハウとかを公開しているというパターンが多くて、いわゆる参考書的な人間じゃない印象はありますよね。
川井 「何をつくるか」と「どう作るか」だと思うんですが、「何を作るか」から入っていく人が多いということですね。貝畑 はい。僕がそうなので、社員もそっちの方が多くなってしまったんだと思います。クーピーは参考書で勉強していくタイプの社員が多いと思います。社員にはどっちにしろってことは言ってなくて、適性にあったスタイルでやっていけばいいと思います。
川井 なるほど。でもバランスがよさそうですね。
カヤックでの役割は?
川井 3人の役割が自然と決まってきたというような話をお聞きしたんですが。貝畑 そうですね。なんとなく決まっていますね。やっぱり柳澤は、経営者としての素質があるなと僕は思っています。非常に頭がいいし、責任感が強いので、会社のサービスを隅々まで見ていますね。今では開発はせず、CEOとしての才能を発揮しているという感じです。僕は自然と技術者のリーダーのポジションです。技術を追っているわけじゃないんですけど、この技術はいけるとかこのサービスはいけるとかなんとなく知見が備わって、直感的に判断がつくようになっているので、技術者をどう育てるかとか技術者にどういう仕事をさせるかということを考えるポジションになっていますね。カヤックは半分以上が技術者で、リーダーのポジションを置かないと把握できないということもあります。が、開発もしたいので、時折やっています。
川井 なるほど。久場さんの方はいかがですか?貝畑 30人くらいのクーピーを一人で切り盛りしています。キャラクターが特徴的なので、会社の顔みたいな感じでもあります。
川井 自然と傾向が別れていったんですか?貝畑 自然ですね。僕はほとんど経営に興味がなく、カヤックで1つ大きなサービスを作りたいと思っています。毎年トライしているんですよ。つくることに一番興味があるので。柳澤は人間に興味があって、会社も一人の人間として捉えて、それを構成している人間もよくないと法人としてはよくないだろうってことで人を育てたりとか、そういうことに興味がいっていますね。そういう意味で興味の対象がスパッと分かれちゃいましたね。
川井 いい分かれ方ですね。貝畑 そうですね。あとほとんどお互いに口を出さないですね。相手の力量というかそのキャラクターを信頼しているというか、変な言い方なんですけど、柳澤を認めている自分を信じているという感じでしょうか。
川井 なるほど。貝畑 柳澤を信じているというだけだと、彼がミスしたときに彼のせいにしちゃうんですけど、彼ができるという評価をした自分の能力を信じているので、もし彼が失敗したとしたら、僕の評価が甘かっただけですから。その信頼関係があるから、お互いにお互いのやることに口を出さないですね。彼が連れてきた人はきっといい人に違いないとか、彼が言ったアイデアは間違いないとか、そういう感覚になっているので、ほとんど衝突することはありません。
川井 いいバランスですね。貝畑 同級生同士で起業するのは難しいと思います。お金とか個人個人のやりたいことでうまくいかなることが多いと思います。カヤックは、たとえば柳澤がカフェをやりたいって言い出したときも「いいね」って言うだけで、「それってWebじゃないよね」とかそんな風に口をはさんだりはしませんでした。逆に僕が「次はこれがくるので、これやろうぜ」って言えば、「いいね」っていう感じになりますね。
川井 なるほど。実は、うちももう1人の役員とは高校の同級生同士で始めたんですよ。貝畑 高校からですか。長いですね。うちは2人だと衝突すると思ったんで、久場を入れて3人にしたんです。そうすると多数決になりますから。慶應の人で出資してくれるっていう人がいたんですけど、その人から、同級生でやると絶対に失敗するって言われたんです。言われると、「なにくそ」って燃える方なんですよ。それでやってきたら、全然問題なくいっていますね。
今後の方向性について
川井 今後の目指す方向ややりたいことについて教えていただけますか? まずは個人的なことからお願いします。貝畑 個人的なところとしては・・・僕は、漫画が好きなんですよ。漫画家になりたいっていうのもあったんですが、なかなかそれは大変なので、個人的には漫画系のビジネスを立ち上げようと、2006年から考えていま、1つ実験的に「漫ガキ」というサイトを立ち上げています。2008年は漫画雑誌を創刊しようと思っているんです。「少年ジャンプ」に対抗できるとは思っていないんですが、Webを絡めてチャレンジできたらと思っています。2007年の12月に、無料のマンガ誌『コミック・ガンボ』を発行していた株式会社デジマが倒産したんですが、あの試みは面白いなと思っていて、カヤックだったら、こういう漫画雑誌をつくるっていうのをやってみたいと思います。
川井 ターゲットはどのくらいの方ですか?貝畑 ターゲットは漫画が好きな世代ですので、高校生から30代くらいまでですね。少年ジャンプを読むような人たちですよ。カヤックならではのものを考えたいと思います。
川井 なるほど。楽しみですね。貝畑 一般的には「ストーリーさえしっかりしていればいける」って言われているんですけど、僕は、漫画って「画を描く人」と「ストーリーを創る人」と「編集者」がちゃんと揃わないとダメだって思っているんです。画のタッチを見れば、いけるかいけないか分かる感性は持っていると思うんで、そういう画が描ける人と面白いストーリーを創れる人を集めてきて、カヤックで編集をして成長させるっていうモデルを作ってみたいですね。勿論、ハードルは高いと思うんですけど、個人的にはそのプロジェクトを成功させてみたいんです。
川井 目指すのはWeb漫画じゃなくてリアルの世界でってことですか?貝畑 そうですね。できればリアルでやりたいですね。編集社からは相当、難しいって言われているので、まずはWebからってことになるとは思いますけどね。
川井 なるほど。では、カヤックとしての方向性はいかがでしょうか?貝畑 会社としては、ラボを伸ばしていきたいですね。昨年から、リクルートの「Media Technology Labs」とコラボレーションでサービスを立ち上げるということを試験的にやっています。同じような展開を他の大手企業とやってみるというのが面白いかなと思っています。2007年に77個のサービスを作り上げたり、アイデアを売る「元気玉」というのは、その足がかりでもあります。
川井 発想がオープンソース的な発想ですよね。貝畑 ソースなんかはクライアントと共同で開発しているものは公開できないんですが、アイデアについては完全にオープンソースですね。
川井 話題になっていましたね。貝畑 このようにラボの外注を請けて、ゆくゆくは産学連携とかで大学の研究室とも繋がっていって、HUB的な役割が果たせるといいなって思っています。今後、アイデアは出したけどカヤックだけではできないものもあると思うので、じゃあ、この会社とこの会社を繋げてみようよって感じのことができたら面白いなって。これは先のモデルとしてありますね。
川井 私、もともとリクルートなんですよ。貝畑 そうなんですか。リクルートは大好きです。あとは、エコ系のプロジェクトをやろうとか、カヤックとしてのメディアをつくろうとかも考えています。カフェもオープンしたり、Webにこだわらずに展開していこうと思っています。
川井 なるほど、そういう展開なんですね。貝畑 勿論ベースにネットっていうのはありますよ。リアル展開の中でもWebと連動してっていうのははずさないとは思います。
川井 クロスメディア的な話ですね。。
川井 最後に若いエンジニアに向けてアドバイスをいただけますか。貝畑 さきほどの話にも出てきましたが、まずは「作りたい」ものを考えて欲しいと思います。その上でつくるときに自分1人でできるものなのか、他の人の力を借りないとできないものなのか、他の人の力を借りるとしたら、その時に自分はどんな立場でいると一番いいのかを考えて欲しいと思います。
川井 もう少し具体的に説明いただいてもいいですか。貝畑 僕は最初、3人でやっている頃は1人でできるものを考えていたんですね。そうすると誰の力もいらないんで、3人だけでアイデアをどんどん出して3人だけで作れるっていう世界だったんですけど、今はサービスの規模もどんどん大きくなってきているので、僕だけじゃどうしようもないんです。そうすると当然、他の人の力も借りなければいけないっていったときに、自分のポジションってなんだろうって思うと、ディレクターだったりクリエイターだったり、自分の役割が変わってきたっていうのがあるんですね。なので、自分が技術者として能力が劣ってきたから他の職種に移ろうっていうネガティブな発想じゃなくて、自分の作りたいものが先にあって、それをやるときの自分のポジションを考えて変えていく方が前向きかなって思います。アイデアが出なくなったらどうしようって不安はありますが、それは会社もいっしょで、カヤックもつくりたいものがなくなったら、会社をやめようと思っています。それは自分へのプレッシャーとして持っていればいいと思います。やっぱり「作りたいもの先行型」がいいですね。
川井 なるほど。よく分かりました。貝畑 カヤックでプログラマを採用するときも、単に技術ができる人はとっていません。やっぱりつくりたいものがあって、カヤックではこういうものをつくりたいという人しか採っていません。そういう人は自然に伸びると思います。時には技術を追い求めるときもあるし、ディレクションをすることもあるでしょうが、「クリエイター」って名乗るのならアイデアが先にあるべきだと思いますね。
川井 なるほど。面白い発想ですね。貝畑 正しいかはわかりませんが、僕はそういう風にしてきましたからね。僕もアイデアが出なくなったらただのおっさんになっちゃうので、そうならない努力を日頃からしているつもりです。
川井 なるほど、努力を怠らないことですね。といっているうちに時間になってしまいました。本当に今日はお忙しい中、いろいろ聞かせていただいてありがとうございました。貝畑 いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました。
次に紹介したのは →村瀬大輔氏(面白法人カヤック) →白井孝史氏(HAL)
- プロフィール貝畑政徳 氏 1974年福岡県生まれ 東京育ち 1989年慶應高等学校に進み、慶應義塾大学環境情報学部に入学。 その後、慶応義塾大学政策・メディア研究科卒業ディジタルメディア・プロジェクトに所属し研究に従事。 1998年に大学時代の同級生と合資会社カヤック設立(2005年に株式会社化)。取締役CTOとして、面白法人カヤックの技術陣をリードしている。 <会社概要>※2010年1月現在 会社社名 株式会社 カヤック(英名:KAYAC Inc.) http://www.kayac.com/ 代表取締役 柳澤大輔/貝畑 政徳/久場智喜 事業内容 面白法人的業務、インターネットサービスの企画・開発・運営 設立 1998年8月3日 合資会社カヤック設立。2005年1月21日 同社より事業を引き継ぎ、株式会社カヤック設立。 資本金 600,000,000円 本社 〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町2-14-7 かまくら春秋スクエア2階 TEL:0467-61-3399 FAX:0467-61-3398 従業員数 93名

