インタビュー記事

interview

第7回 樋口智裕 氏

higuchi_main

今回は動画検索エンジンFoooooの生みの親である株式会社バンク・オブ・イノベーションの代表取締役CIO(Chief Innovation Officer)の樋口智裕氏にお話を伺いました。樋口氏はバンク・オブ・イノベーション社の創業者でもあり文系出身のエンジニアにもかかわらず、圧倒的シェアの動画検索エンジン「Fooooo」をほとんど1人で作り上げました。パソコンとの出会いや起業するきっかけなどをバンク・オブ・イノベーション本社にて約1時間程伺いました。

※取材日は、2008年8月です。所属や役職などは当時のまま掲載しております。

<PCとの出会い>
川井:よろしくお願い致します。
樋口:こちらこそよろしくお願い致します。
川井:早速ですが、始めてパソコンに触れたのは、いつ頃でしたか?
樋口:確か中学校の時に両親が買ってくれたんだと思います。その当時はゲームなどで、遊んでいましたね。
川井:機種とかは覚えていますか?
樋口:確か富士通のFMVでOSがWindows3.14だったと思います。
川井:ゲームで遊ばれていたという事ですが、最初からパソコンに入っているゲームですか?
樋口:そうですね。最初から入っているゲームもやりましたが、それ以外に、カードゲームとか、テーマパークを作るゲーム、後はタイピングの練習をしていましたね。
川井:「特打」とかですか?
樋口:「特打」みたいなものは、たぶんその当時はまだなかったですね(笑)。確か新聞の記事とかをそのまま打っていました。
川井:ちなみに何で早打ちの練習していたんですか?
樋口:その当時はブラインドタッチができるのが格好いいと思って憧れていたんですよ。
川井:なるほど。じゃあ今でもかなり速いんですよね?
樋口:いえいえ、全然速くないです。人並みです(笑)

学生時代
川井:次のステップとしては、どのような感じで進まれたのですか?
樋口:高校2年生の冬だったんですけど、本田宗一郎さんの自伝を読みまして、彼の生き様というか、成し遂げた事に感動したんです。その時に経営に興味を持ち始めたと同時に起業したいという思いが芽生えました。
川井:樋口さんが高校生の頃というと、98年ぐらいですか?
樋口:そうですね。
川井:まだベンチャーブームではないですよね?
樋口:そうですね。ベンチャーブームは大学2年生ぐらいですね。
川井:大学には経営をやる前提で入学されたんですか?
樋口:そうですね。ただ実際は、青山学院大学に入学してからプログラムを始めて、ゲームを作ったんですよ。それをエスロベクタで公開して、多少そこでお金をお儲けたりしていましたね。
川井:ゲームって動くゲームですか?
樋口:3Dの経営シュミレーションゲームです。
川井:具体的にはどのようなゲームを作られたんですか?
樋口:自動車会社を経営するゲームですね。車のデザイン、広告、エンジンとか色々なファクタがありまして、F1とかに参入するとブラント力が上がったりとか、かなり作り込みましたね。
川井:なるほど。やり終えるのにどれだけ時間が掛かるんですか?
樋口:多分2~3時間で終わると思いますよ。
川井:そのぐらいで終わるんですね。どれくらいダウンロードされたんですか?
樋口:確か、全部で30万~40万ダウンロードだったと思います。
川井:かなりの数ですね。相当評判になったんじゃないですか?
樋口:結構、雑誌とかで取り上げられていましたね
川井:それはすごいですね!
樋口:いえいえ。
川井:話は戻りますが、先程、本田宗一郎の本にひかれて、経営に興味を持ったと言っていましたが、本以外にも何かきっかけがあったんですか?
樋口:本以外では特にないですね。ただ自分が経営的な事に向いていると思っていたんですよ。
川井:それはどんなところから思われたんですが?
樋口:多分、1番は僕の性格じゃないですかね。
川井:そうなんですね。そういう思いがあったら大学時代にベンチャーを立ち上げたりしたんじゃないですか?
樋口:はい。もともと起業したかったので、大学3、4年の頃、当時、幾つかあった、大学生で起業を志している人が集まる会に出入りして、そこで出会った人たちと会社を創りました。でも当時、僕は社長ではなかったんですけどね。
川井:青学って、そんなに学生ベンチャーのイメージ無いですよね?
樋口:そうですね。あまりいないですよね。
川井:どうしても学生ベンチャーだと、SFCさんがクローズUPされていますけど、最近早稲田もやっていますよね。ウノウ社長の山田さんも確か学生の起業を支援していましたよね?
樋口:そうですね。やっていますね。
川井:最初はどんな事を始めたんですか?
樋口:当時は色々な事をやる会社だったんです。事業も担当者それぞれが好きに考えていました。メンバーは4人いたんですが、1人1事業みないになっていましたね。僕は携帯を使った勉強のシステムを作っていました。他に航空券販売システムの開発なんかもやっていましたね。
川井:うまくいったんですか?
樋口:うまくいったかはわかりませんが、当時の社長は今も続けているので、そこそこはうまくいったんじゃないですかね。
川井:なるほど。当時の事業はまだ残っているんですか?
樋口:今は残ってないと思いますよ(笑)
川井:ちなみに何という会社ですか?
樋口:エルテスと言います。
川井:聞いた事ある様な気がします。ちなみに今は、何やっている会社ですか?
樋口:動画のパケージを作っていますね。
川井:この辺じゃないですか?
樋口:そうです。社長は菅原って言います。
川井:知っていますよ(笑)
樋口:そうでしたか。彼と一緒に始めたんですよ。
川井:そうですか。以前、菅原さんの所にお伺いしたことがありますよ。
樋口:そうなんですか。
川井:世間は狭いですね。
樋口:彼は、結構この辺じゃ有名ですよ。
川井:そうなんですか。

個人事業主時代~再度会社設立
川井:その後、樋口さん自身はどうされたんですか?
樋口:大学卒業と同時に会社をやめまして、そこらか半年ぐらい個人事業主として仕事をして、もう一度、会社を立ち上げでました。
川井:個人事業主ですか?
樋口:そうですね。
川井:学生から卒業したばかりでどうやって仕事を取ったんですか?
樋口:僕の場合は、前の会社から仕事を頂いたり、頑張って営業して取ってきたという感じです。
川井:営業って大変じゃなかったですか?
樋口:あの当時が、一番大変でしたね。生きていくのに精一杯でしたね。
川井:具体的には、どういう風に営業活動したんですか?
樋口:主に知り合いのツテを使っていましたね。
川井:結構、個人事業主をやりたいっていうエンジニアの方は多いんですが、営業をやりたくないからという理由で、なかなか1歩前に踏み出せない人が多いんですよ。
樋口:仕事柄そうですよね。
川井:普通、営業担当者に新規飛び込みをしろとか新規アポを取れと言っても嫌がるものですし、そんな簡単に案件も貰えないですよ。エンジニアである樋口は、相当苦労したんじゃないですか? 
樋口:そうですね、かなり営業は苦手でしたね。
川井:何年ぐらいやっていたんですか?
樋口:個人事業主の期間は半年ぐらいですね。そこから会社を作ったんですけど、最初の1年は受託開発でしたね。
川井:会社を作るきっかけはあったんですか?
樋口:特にはないですね。元々やリたかったので、なるべく早く実現したかっただけですね。
川井:なるほど。なるべく早く法人化したかったんですね?
樋口:そうですね
川井:会社を創りたいとか将来、何かやろうとする動機がって一体どんなことですか?
樋口:1つは自分のやりたい事を実現したかったこと。あと1つは、1回しかない人生だから何か大きい事をしたかったというところですね。
川井:なんかイメージがあったんですか? 例えば、どんな事業でどんなサービスをみたなプランはありましたか?
樋口:サービスまでは考えていませんですが、出来る事が限られていて、そんなにお金が掛からない事や、自分の頭だけで勝負できる環境をと考えたら、Web系の事業というのは必然でしたね。
川井:Web系の事業でやっていけるだけの技術力はその当時からあったんですか?
樋口:いえ、頑張って一から勉強していましたね。
川井:どのように勉強していたんですか?
樋口:手当たり次第やって、行き詰ったら調べて勉強し、問題を解決してという連続でしたね。
川井:なるほど。最初に、勉強し始めた言語はなんですか?
樋口:最初はJavaやPeal、PHPです。
川井:一通りやられているんですね。
樋口:そうでね。VBとかまで幅広くやりましたけど、その辺は全部忘れました(笑)

会社の方向性
川井:会社を作られてから、どういったきっかけで受託開発から脱して、新しいメディアを作るところまでこぎつけたんですか?
樋口:現在の主要事業はFoooooという動画検索エンジンなんですけど、それを1人でコツコツ作ってリリースしたところ、かなり反響が良くて海外でも取り上げられたんです。このサービスは、成功するんじゃないかと思い、集中して作っていたんですけど、資金が足らないので、その間もずっと受託開発を続けていました。そんな時、ベンチャーキャピタルの人と会う機会があって、運よくまとまった資金を出資してもらうことができたので、受託をやめて動画検索エンジンFoooooへの一本化ができたのが、大きな要因ですね。
川井:Foooooのアイディアはどういうきっかけで思いついたんですか?
樋口:市場のニーズから汲み取りました。当時、You Tubeとかニコニコ動画とかの、動画系サイトが沢山出てきていたので、それらをまとめて検索できるサイトの需要があると思ったんですよ。
川井:当時はそのようなサイトはなかったんですか?
樋口:ありませんでしたね。
川井:じゃあ初めで作られたんですね。
樋口:多分。世界にもなかったと思います。だから世界で結構取り上げられたんだと思います。
川井:企業秘密ならいいんですけど、特殊な技術とか使っているんでしょうか?
樋口:特殊な部分は、検索の中身とクロールの所ですかね。中でも一番特殊なのはクロールですね。GoogleさんだとWebとは違ってある程度、動画のある場所が決まっていまして、落ちているところに特化してクロールするのが特殊ですね。後は検索エンジンのところで、いかに早く検索結果を出すかですね。
川井:かなり工夫をされたんですね。そういったことはお1人で考えられたのですか?
樋口:基本は1人ですね。
川井:スゴイですよね。確か文系出身ですよね?
樋口:そうですね。文系プログラマですね。
川井:お話しをお聴きしていると、やれば出来るんだって思いますね。ちなみにFoooooは、どれだけの期間で作られました?
樋口:2ヶ月ぐらいで、今のα版はほぼ完成しましたね。ただ今ほどの、精度はありませんでしたけどね。
川井:スゴイですね。他の人と何が違うんですかね?
樋口:多分、“本当にやりたい”かどうかじゃないですか。やろうと思えば人間なんでも出来ると思うんですよ。一歩踏み出す勇気が「ある」か「ない」かだけだと思いますよ。
川井:なるほど。それをやっている時は他の事には脇目も触れずそれに没頭する感じですか?
樋口:そうですね、僕は開発している時が一番楽しいですね。
川井:その頃は家から一歩も出ずって感じだったんですか?
樋口:そうですね。
川井:なるほど。それだけ集中すれば、何でも出来る気がしますね。それは文系の人間には勇気を与えますね。実は僕の時代って、文系出身で女性のCOBOLエンジニアが多くて、汎用機系のニーズがあったんですよ。その後そのニーズはなくなったんですけど、最近は、PHPから覚えたり、いきなりRubyを勉強したりする文系出身者が増えていたりもしますよね。
樋口:今は本当に入りやすくて、特にWebに関してはホームページを作るのも簡単になっていますからね。
川井:今の話だと、アイディアとニーズ、絶え間ない努力の3つをセットにすると、確かに何か出来るような気がしますね。
樋口:そうですね。アイディアとある程度の実力さえあれば出来ますから、ちょうど良い時代に生まれてきた気がします。(笑)
川井:その後Foooooが出来てからはどうですか?
樋口:Foooooを初めてから、菅原さんのところで一緒に働いていた2人を誘って、3人で新しい会社を初めました。
川井:いつ頃、初めたんですか?
樋口:昨年の3月です。
川井:昨年の3月だと、私はその前に菅原さんのところに行っているので、お会いしていたかも知れませんね。
樋口:どうですかね(笑)
川井:他の皆さんは、それぞれどのような技術をお持ちなんですか?
樋口:基本的に開発は、僕しかやってないですね。経営全般を富島が担当して、ファイナンス部門は田中が担当していますね。
川井:IPO準備もそろそろ始める感じですか?
樋口:IPOはまだ早いですね(笑)

<Foooooの現状と今後の展開>
川井:Foooooの現状や方向性、また課題は何でしょうか?
樋口:今はPVをドンドン伸ばそうという方針です。
川井:今はどれぐらいのPVなんですか?
樋口:月間5,000万PV前後でユニークユーザーが300万前後ですかね。でもこれを10倍に伸ばさないとIPOはできないんですよ。
川井:もう広告収入などはある程度入っているんですか?
樋口:広告収入は考えていないですね。とりあえずPV数を伸ばす事に集中しています。
川井:現状は採算度外視って感じですか?
樋口:そうですね。
川井:いくつか動画検索サイトってあると思いますが、一番競合ししているのはどこですか?
樋口:一番厄介なのはGoogleさんですね。日本には、まだ進出していないのですが、海外では既にやられていて、当然ながら強いですね。後は、海外でtruevioというAOLの子会社なんですが、こちらも結構強いですね。
川井:日本は目じゃない感じですかね
樋口:今のところは目じゃないですね。一応競合は4社ぐらいありますが、PVとかユーザー数とかでは、うちが圧倒的に勝っていますからね。
川井:今後はFoooooを中心に事業展開をしていこうとお考えですか?
樋口:そういうつもりは全くないですね。Foooooはバンクオブイノベーションの1つサービスでしかないので、次々と新たなサービスをリリースしていこうと思っています。
川井:また、世界で通用するサービスを作っていく感じですか?
樋口:そうですね。基本はエンターテイメント系のサービスだと思います。
川井:企業秘密だとも思うのですが、他にイメージしているサービスとかあるんですか?
樋口:画像解析系のBtoCサービスをやろうかなと思っています。
川井:その技術はご自身で研究されているんですか?
樋口:基本的には独学でやっていますね。
川井:本当にすごいですね。
樋口:習得した技術をアウトプットするために最短経路でいくのがすごく楽しいんですよね。あまり体系的な勉強するのは不得意で、どちらかと言うとゲリラ的にやるのが得意なんです。何か目標があってそこにたどり着く為の勉強が好きなんですよ。
川井:ブレイクスルーをする為には何か原動力が必要だと思うのですがどうですか?
樋口:基本的には、ユーザーにウケたいと言うのが一番のモチベーションだと思います。
川井:モチベーションがブレイクスルーをする原動力になっているということですね。
樋口:そうですね。やっぱり「このシステムを作り終えたらスゴイ事になるぞ」とか考えると、すごいモチベーションになりますね。
川井:すごくプログラミングを楽しんでいるような気がしますね。
樋口:その通りです。
川井:すてきな生き様ですね。会社はどんどん大きくしていく方向で考えているんですか?
樋口:もちろんです。
川井:どういった起業家を目指しているんですか?
樋口:本田宗一郎さんや孫さんのレベルまでいきたいですね。
川井:相当夢が大きいですね。でも素晴らしいと思います。
樋口:はい(笑)
川井:ウノウの山田さんが、絶対ブレイクすると言ってましたけど、今日、お話をお聞きして、私もそう思いました。
樋口:ありがとうございます。
川井:今まで企業軸でお聴きしましたが、個人的にはどんな人生をお考えですか? 例えば経営者として昇りつめるのか、技術者として腕を磨くのか。
樋口:僕の中では経営者のイメージはないですね。サービスを生み出す人になりたいですね。
川井:なるほど、今回、代表を退いてCIOという役職になられたんですよね。そのあたりとも関係がありそうですね。
樋口:そうですね
川井:マクロミルさんってご存知ですか?
樋口:はい。知っています。
川井:あそこも以前代表だった、杉本さんも同じ様に代表を退いて、ファウンダーという役職になられたんですよ。彼の場合は「自分が離れた時に、会社がどうなるか見てみたい」と言うのも半分あったみたいですけどね。
樋口:そうなんですか。
川井:マンションの一室から10年で1部上場企業を作り上げましたから、スゴイですよね。
樋口:確かにすごいですね。
川井:25歳で退かれるって世間から見たら変な感じですよね?
樋口:多分、外部の人間はビックリしていると思いますよ。
川井:Chief Innovation Officerって他の企業でありましたっけ?
樋口:日本ではないと思います。海外にはあるみたいですけどね。
川井:会社のお名前自体が、会社のコンセプトになっているから良いですよね。
樋口:ありがとうございます。
川井:動画検索のAPIサービスを出されていましたよね?
樋口:そうですね。
川井:今後は、APIサービスも本格的にやっていく感じですか?
樋口:そこにはあまりウェイトを置いてないですね。今は問い合わせがあったら提供すると言う感じです。APIサービスは受託の延長線のイメージがあって。基本的には今はFoooooのサービスを伸ばさないと意味がないと思っていますね。
川井:会社の名前からだと若干、APIとかの1つの技術を生み出して、エンジンとして、他の企業に使って貰うというような意味合いがあるような気がしたので、そっちの事業もやっていくのかなと思ったんですけど、それは考えてないという事ですか?
樋口:考えてないですね。
川井:やはり自社サービスの構築がメインですかね?
樋口:そうですね。
川井:何年ぐらいでIPOをと考えていますか?
樋口:4年ぐらいで考えています。できたら30歳になる前には、上場したいですね。
川井:なるほど。

<若手エンジニアにアドバイスを>
川井:それでは最後に、若いエンジニアにメーセージやアドバイスを頂いてもよろしいですか?
樋口:1つは自分の好きな事をやり続けるという事です。後は、やりたい事を見つけるという事ですね。やりたい事を見つけると、おのずと今やるべき事が、見えてくると思います。
川井:多分やりたい事が見つからない人が大半で、一生見つからない人も中にはいると思うのですが、やりたい事はどうすると見つかるんですか?
樋口:僕の場合は、出会っちゃったんでわからないですね(笑) ただ一つ言えるのは、一生懸命やれば、何かしら見つかるということだと思います。
川井:なるほどよく分かりました。本日は本当にありがとうございました。
樋口:こちらこそ、ありがとうございました。

<プロフィール>
1983年、千葉県に生まれ、大学在学中に学生ベンチャー の立ち上げに参画。青山学院大学を卒業後に個人事業主として受託開発に従事2006年に株式会社バンク・オブ・イノベーションを設立。2007年に動画検索エンジン「Fooooo」をリリースし、現在に至る。

LINEで送る
Pocket

TO TOP