インタビュー記事

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第26回 角谷信太郎 氏(後編)

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<コミュニティでの覚醒>
川井 そんな角谷さんはコミュニティの活動はどこで覚醒したんですか?
角谷 私の存在が知られるようになった直接のきっかけは2004年のLL WeekendでのGroovyについてのLanguage Updateの発表だと思います。この話は、高井さんが「都合悪いから代わりにやって」と話をいただきました。これがたぶんすべての始まりです。
川井 今の話を聞くと、そこに至るまでって、間が飛んでるような感じもするんですが、LLのイベントとか高井さんとの絡みとかどこからきたんですか?
角谷 ええと、Groovyについては、自分のサイトに翻訳記事を載せていたからだと思います。高井さんと知りあったのは、どこだっけ……。PofEAA読書会かなあ。Seasar関連のイベントの喫煙所は……artonさんに高井さんを紹介した場だっけか。
まあ、それはそれとして「発表してもいいかな」という気持ちになったのは、転職がきっかけだとは思います。転職して心機一転頑張ろうみたいな気持ちとか、永和はオブジェクト倶楽部というコミュニティをホストしていて、それに関わったことが大きいと思います。
川井 なるほど。
角谷 で、オブジェクト倶楽部の2回目のイベントで、初めてライトニングトークっていうものをやったんです。今ではオブジェクト倶楽部のイベントでも恒例になってるんですけど、初めはなかなか応募もなった。そこで、数合わせのために無理やりトークをやらされて、大失敗しました。ガチガチに緊張して、話す予定の内容も話せなかった。でもまあ、それがきっかけで懇親会で声をかけてもらえたりもして。
川井 それで気持ち的には普通にそういうコミュニティやイベントに入っていけるようになったんですね。
角谷 そうですねえ。それまで人前でしゃべる機会も経験もなかったので、失敗するのは当たり前というか。SIerにいて、平凡にSEやってると誰かにプレゼンテーションする機会ってほとんどなかったですし。ああ、そういえばLLで発表するときに、初めてあの高橋さんとやりとりしました。「高橋さん! 魂がきれいそうな方ですね!」みたいな。
川井 あの高橋さんという時代があったんですね!
角谷 いやいや、今でも「あの高橋さん」ですよ。高橋さんはすごい。どうかしてる。
川井 そうなんですね。
角谷 でまあ、最初に大失敗して次がLLという大舞台という。LLのイベントって言語オタクの祭典みたいなもので、何百人という言語オタクの前で発表する、と。ものすごくビビッたんですけど、いざやってみたら結構ウケた(笑)
川井 それはRubyの話ですか?
角谷 いや、RubyではなくてGroovyです。Rubyの話をあの人たちの前でするなんて畏れ多くて。Groovyみたいな妙な言語なら私でも話せるかな、と。でまあ、それがきっかけで、名前というか――「あ、Groovyの人」とか「ジョジョの人」みたいなインプレッションをLL界隈の人に持ってもらえるようになりました。で、さらにその翌月に「XP祭り」というイベントがあって、そこでは咳さんがしゃべる予定になっていて。チームのみんなで聞きに行きました。その時のXP祭りでもまたライトニングトークがあったんですけど、しゃべる人がちょっと足りなかった。で、運営もやってる先輩の天野から「しゃべらない?」と昼休みに声をかけられて。もう度胸だけはついてるので、その場で発表資料をつくりはじめてトークをしました(笑)。
川井 (笑)。
角谷 確かそのときには、咳さんだけじゃなくてtDiaryのたださんも来ていて。tDiaryはもう何年も使っていたので、何か絡みたいんだけど、どう声を掛けたらいいのかわからない。「tDiaryいつも使ってます」以上に話を続けられる気がしない(笑)でも、発表したら名前を覚えてもらえるかなあ、と思って。この辺りから弾みがついてきた感覚をおぼえています。発表してフィードバックがあると面白いし、手っ取り早く人とも絡めるようになるしで「これはいい」と思うようになりました。
けですね。
川井 なるほど。そのときは何のプレゼンをされたんですか?
角谷 XP祭りでは、ちょうどXPのプロジェクトやり始めた頃だったので、そこで実践しているプラクティスを紹介しました。バーンダウンチャートといって、イテレーションの作業をポイント化して、残作業を把握するための簡単なグラフです。それを紙に書いて貼り出しておくんですけど、自分たちはこんな風に使ってます、という紹介ですね。
川井 なるほど。
角谷 だから、コミュニティといっても最初はRubyとは直接関係ないところから入っていった感じです。勤務先がXP界隈では名前が知られていたので、発表したり名刺を出したりするとXP界隈のコミュニティの人たちに話を聞いてもらえたのも大きかったと思います。なので、Rubyには正面突破ではなくて、脇からジワジワという感じです。
川井 なるほど。ソフトランディングですね。
角谷 そうですね。Rubyは好きだから、すごい人達と何か絡みたいけど、かといってカッコいいRubyプログラムは書けない。でもやっぱり何か出来ないかなぁ、というのを5年ほど続けて(笑)。
川井 そうなんですね。ずーっと抱えながらやってたんですね(笑)。
角谷 だからって、感極まって何かしてたわけでもないんですけどね。「俺も何かライブラリ作るぞ」とかいった方向には向かなくて。どうでもいい映画を観て暮らしていました。
川井 何か参加したいとか関わりたいとかだったんですね。
角谷 そうですね。オリュンポスの神々への憧れというか。近づけたらいいなあ、ぐらいのゆるい気持ちでしたが。
川井 なるほど。
角谷 で、ある日、Rubyのカンファレンスを日本でもやるらしいという内容を卜部さんの日記で読んで。
川井 RubyKaigiですか?
角谷 最初の正式名称はRubyKaigiではありませんでしたけど、まあ、コードネームRubyKaigiですね。で、「イベントの運営なら私も手伝える!」と思って感極まった(笑)
川井 なるほど(笑)。
角谷 オブジェクト倶楽部でコミュニティっぽいイベントの運営ノウハウなら多少はあるし、声を掛ければウチのメンバーにも手伝ってもらえるんじゃないかと思って。「この速さなら言える」というやつですね。で、「RubyKaigiを手伝わせて欲しい」ということを高橋さんや笹田さんにお願いして運営メンバーに押しかけて入れてもらいました。
川井 2005年ですか?
角谷 2006年に入ってからです。2006年のデブサミのときにお願いしました。
川井 なるほど。
角谷 笹田さんもすごい人ですよね。「あ、あの笹田さん!」みたいな(笑)。
川井 あの笹田さん!ですか(笑)。
角谷 そのとき、日本Rubyの会のブースで、YARVをハックしている笹田さんの隣りに座って、一日中「RubyKaigi手伝わせてください」と言い続けてました。
川井 でもその頃まだ快くというか、ぜひぜひという感じですよね?
角谷 どうだったんだろう。でも結果としては皆さんナイスでした。快く受け入れてくれたと私は思っております(笑)
川井 そういった意味ではRubyのコミュニティってすごくオープンですよね。すごくいい人ばっかりだし。
角谷 で、RubyKaigiを中心に関わりはじめたという感じです。
川井 そこからRubyコミュニティの人生が始まったんですね?
角谷 Rubyコミュニティといっても、Rubyの開発にはビタイチ絡めてませんが。というか、Rubyコミュニティって何なんでしょうね? 
川井 (笑)。なんか高橋さんは、ふらっと来てふらっと出ていけるような堅苦
しくないところがいいって言ってましたけどね。
角谷 そうい意味では確かにオープンなんですけど、オープンすぎるんですよね(笑)。なので、実際のところがよく見えてこない。日本Rubyの会ってのがあって、高橋さんが会長でっていうのは
わかるけど、要はメーリングリストだし、イベントで前に出てる人はいつも同じだし(笑)
川井 高橋さんは以前、日本人が開発者で近くにいて、そうした人たちを目の前にして「Rubyの会の会長!」みたいなことを言うのはなかなか大変なんだとおっしゃってました。何かを思い切ってふっ切らないとそう言えないんですよみたいな感じで。
角谷 なるほど。
川井 「おまえは何だ!」ということを言われそうで居心地が悪いみたいなことがあったみたいです(笑)。
角谷 ああ…当初はということですか。
川井 当初は(笑)。
角谷 高橋さんにもそんな時代があったんですね。僕は今そうですね。「おまえは何だ!」と言われたら「何なんですかねぇ?」と答えるしかない(笑)。
川井 (笑)。『たのしいRuby』を書いたときに、Rubyはこういうコンセプトなのかということを端書きで書いて、そこから吹っ切れたということを高橋さんは言ってましたけどね。
角谷 「なんとかのなんとかです」という肩書きみたいなものがないと、わかりづらいし自分としてもいたたまれないところがありますね。
川井 何かしら必要ですよね。でも『JavaからRubyへ』なんて本を翻訳されたりしてるじゃないですか。
角谷 だからあれはよかったです。「『JavaからRubyへ』を翻訳した角谷です」と言えるようになった(笑)
川井 きっかけは何だったんですか?
角谷 きっかけは、オライリーの編集者さんからのメールです。Railsの書籍の翻訳を検討してるので、査読を頼まれました。そのRails書籍の原著者のBruce Tateのことを自分のWebサイトに書いたりしてたので、それが目に留まったらしくて。で、「よかったら翻訳もやってみませんか」と声をかけてもらったんですが、断わりました。当時Railsは凄い速さで発展していたので、翻訳してるうちに賞味期限が切れたら嫌だなあ、と思ったのがひとつ。もうひとつは、すでにRailsについては第一人者と呼べるような人たちが日本にもいて、書籍を執筆中とのうわさは聞いていたので、そこに混じって戦える気がしなかった(笑)
川井 なるほど(笑)。最初から度胸がありますね。そのチャンスはいったん置
いておいてみたいな感じですかね。
角谷 置いて、というか「同じBruce Tateの書籍を翻訳するならこっちの方がいい」と言って『From Java To Ruby』の翻訳査読書みたいなものを自分で勝手につくって提案しました。その後、何度かやりとりをさせてもらって、翻訳することになりました。
川井 ちなみに英語はどこで覚えたんですか?
角谷 英語?
川井 翻訳されたということは、何か腕に覚えがあったりしないんですか?
角谷 ないです。全くないですね。人生で英語は受験以外ではやってなくて、いわゆる技術的な
の英語に触れたもの就職してからです。技術的な動向なんかを追いかけるのに、最初はもちろん英語がわからないので、日本語の情報を見ていくわけですけど、何年か経つと、日本語だと限界を感じるんですね。ちょっと詳しいところとなると英語の情報が必要になってくる。それで、わからないなりに英語を読み始めました。情報収集にすごく力が入ってた頃ですね(笑)。だいたい情報収集に力が入るときって、本業があまり面白くなかったんだと思います。
川井 わかります(笑)。
角谷 それが英語のサイトや洋書を読み始めたきっかけですね。
川井 でも翻訳できるほどの力はついていたんですね。
角谷 「翻訳できる」というと微妙ですけど……まあ、自分のサイトに英語の記事を翻訳して載せたりはしてました。
川井 その頃から部分部分でいいもの見つけては翻訳してUPしてたんですね。
角谷 全部で3つか4つぐらいですけど。なので、特殊な訓練とかはやってないです。
川井 作業的にはスムーズにいったんですか?
角谷 他の方のことを知らないんですけど、効率はかなり悪いと思いますよ。
川井 翻訳は一冊どれくらいかかるんですか?
角谷 結局、200ページ強の『JavaからRuby』の翻訳には半年かかってます。
川井 仕事しながら半年で出せたんですね。
角谷 でも、本職の方の半分以下のペースですから。翻訳はいろんな人に迷惑をかけながらやっております(笑)。
川井 (笑)。翻訳とかやられるときに、誰かにアドバイスもらったりされたんですか?
角谷 詳しそうな人にレビューをお願いしてます。
川井 そうなんですね。でもきれいな本が出て、次のオファーとかもきてるんじゃないですか?
角谷 そうですね。迷惑かけながらやってます(笑)。
川井 最初の頃のお話だと、どうしようと悩んでいるうちプログラマの世界か
ら徐々にコミュニティに参加するようになったりとか、有名人と接するように
なったりとか、自分が発表するようになったりとか、いろいろノウハウが入り始
めて、すごいいいステップアップというかキャリアアップに見えますね。
角谷 結果だけ見ればそうかもしれません。
川井 その生き方って若い方にすごい参考になるんじゃないかなあとか思いますね。
角谷 効率は悪いですよ。
川井 でもこればっかりはそんな簡単にいかないじゃないですか。
角谷 今はもっと効率よくできるんじゃないでしょうか。インターネットもあれば、ライフハックもあるし(笑)。
川井 いろいろ参考になる人生じゃないかなと思いますね。講演とかも結構依頼も多いですよね?
角谷 なくはないですけど、多いというほどではありません。だから、ときどき声を掛けてもらえると嬉しいです(笑)。
川井 やっぱり副業として、そちらで生きていけるような人生も考えてらっしゃるんですか?
角谷 いいえ。
川井 やっぱり会社ベースですか?
角谷 所詮アマチュアなので。講演なり翻訳なり、それ一本でやれるとは思ってません。
川井 じゃあ今は、メインは会社の業務で開発をしっかりやって、自分を豊かにするためにコミュニティに参加するとか翻訳やられたりとかしてるんですね。
角谷 コミュニティの活動とか社外への情報発信については、勤務先に理解があるので。外に向けた活動が巡り巡ってメンバーのやりたい仕事につながるということをよくわかっているので、隠れてやる必要がないのは助かります。
川井 それはいい環境ですね。
角谷 そうはいっても仕事は仕事であるし、楽しいことだけをやれるわけでもないので。所詮は福井の200人規模の平凡な受託開発の会社なので。地味にやってます。
川井 なるほど。

今後取り組みたいことは?
川井 何か将来やりたいこととか、今後取り組みたいこととかはあるんですか?
角谷 現実的なロードマップみたいなのと全然関係ないのとどちらですかね?
川井 両方お聞きしたいです(笑)
角谷 とはいいながらも、長期的な計画とか、強く「こうなりたい」と思っているものはないんですが(笑)……ええと、あるとすれば「仕事をちゃんとやりたい」ということでしょうか。「ちゃんとやりたい」というも漠然としているんですが……。お客さまがいて払った金額に見合う価値を提供できるようになりたいな、と。
川井 なるほど。
角谷 あとは、優秀な人は一人でやれちゃうんですよね。自分の好きを貫いて。ところが私はそんなに優秀ではないので、一人で何もかもやりきれるというわけではない。なので、会社の中で同じような思いを持っている同僚たちと、チームでお客さまに喜んでもらえるような仕事を続けていくための枠組みを実現したい。いまのRailsやRubyの注目され具合にうまく乗っかって、XPやアジャイル的な開発の進め方を実現させられたらなあ、と思ってます。
川井 なるほど。でもほんとに発揮できるいい環境になってきてますよね。
角谷 周囲の状況というものは自分達だけではどうしようもないところがありますが、今はたまたまいい方向に風が吹いてきていて、同僚にも恵まれているので、すごく助かってます。
川井 なるほど。夢というか、仕事以外の方はどうなんですか?
角谷 えーと。いま言えるようなものはないですねえ(笑)。
川井 まだ方向性を考えている最中とか、あまり考えずに自然と流れていこうという感じなんですか?
角谷 あまり先の話が苦手なんです。長い計画に向けて何かを進めていくというのがうまくできない(笑) 1年から3年ぐらいの単位で、どうしていけばいいかなあ、みたいなのは考えてはいるんですけど、そこから先は……あまり考えてないですね。
川井 なるほど。
角谷 少し前に、とある講演の質疑応答で、竹迫さんから「アジャイルとかXPとか、今広まってき
ているけど、次はどういうのがくると思いますか」という質問をされたことがあって。いい質問ですよね。でも、答えられなくて(笑)。「え、次に何かあるんだっけ? 私はもうRubyとアジャイルでいいです」と。
川井 考えてませんと(笑)
角谷 まあ、でもあまり職業人生の先を考えてないのもどうかと思いますね。30歳過ぎて、会社でも自分
より若い人達が現場で経験値をためて力をつけてきたりするわけで。吸収する速度も手の早さもすごい。これは勝てないなあ、と思っちゃうんですよね。
川井 うんうんうん。
角谷 もちろんプログラマであり続けられればいいですけど、平凡だから悩みますね。
川井 なるほど。そろそろどうしようかなって思う時期に来てる感じですか?
角谷 高井さんとは「若い人達を全力でつぶす」と言ってます(笑) 半分冗談ですが、半分本気です。
川井 (笑)負けないぞってことですよね。
角谷 まあ、そんなこと言っても私は結局、若い人達に追い抜かれていくわけですけど。
川井 やっぱり発展するための必須条件ですよね。下の世代が頑張ってというのは。
角谷 どうせ抜かれちゃうから、抜かれた後の居場所を見つけていかないとなあ、と。身の安全を保つためにはどうすればいいかは時々考えます(笑)
川井 生きていけるかなみたいなですか(笑)。この業界であることは間違いないですよね?
角谷 この業界そのものは面白いと思ってますので。

若手エンジニアへのアドバイスをお願いします
川井 じゃあ一番最後に、抜かれちゃうかもしれないし、つぶさなきゃいけない若い人達にどう生きるといいよなどアドバイスをお願いします。
角谷 若い人は総じて私より優秀なので特に言うことはないんですが……あるとすれば、「人に会う」というのは早めにやっといた方がいいと思います。「ネットでみかけるすごそうな人」も会ってみれば人間なので。
川井 そうですよね。知り合いとのネットワークとか一生の財産ですもんね。
角谷 ネットワークとかあんまり功利的には捉えたくないですが、やはり人と会うといろいろと刺激受けたり、それがきっかけで何かが動いたりしますよね。自分の状況が変わったり、何かを始めたりするきっかけになることもあったり。私も引っ込み思案だったので、どう絡めばいいかわからなったんですが、よくよく考えればこの業界のプログラマの集まりなんかは、自分以外にも引っ込み思案がたくさんいるはずなんですよね。川井さんならよく知ってらっしゃいそうなアッパー系のイケイケな人達のノリとは違うことが多い(笑)。
川井 (笑)。プログラマはみんなそんな感じですよね。
角谷 だから自分が社交的であるとかないとか関係なく、会いに行ってみるのがいいよねと思います。そもそも社交的じゃない人達の集まりだと思えばいいんじゃないかと(笑)。とはいえ、実際に顔を出してみると、自分の足りてなさを思い知って凹んだりすることもあると思いますが、それも含めてやっぱり人と会うことは大事だと思います。今なら会うだけでなく発表する機会もたくさんありますし。
川井 そうですよね。
角谷 1000speakerとか。あれは素晴しいですね。
川井 この間やってましたよね。
角谷 参加するのもいいんですけど、できれば発表するのが大事だと思います。まあ、何か言うと今はすぐに叩かれたりして大変な面もありますが。
川井 (笑)
角谷 今はフィードバックが強すぎる部分もあるので無邪気に「やればいい」とも言えないんですが、そうはいっても結局プレゼンは場数を踏まないと上達しないので、やるしかない。
川井 そうなんですよね。
角谷 何かしら発表する機会が今はいっぱいありますよね。一方で、今の若い人達は大変だなあ、とも思いますが。プログラムが書けるだけじゃだめで、それをエンターテイメントとしてプレゼンしないといけない(笑)。
川井 たしかに(笑)。角谷さんはレジュメとかもすごい凝ってらっしゃいますよね。色の使い方とか表紙のタイトルとか。
角谷 ああいうのは、上手な人がいるのでそれをパクります。
川井 なるほど(笑)ああいうのも面白いなと思ってましたけど。
角谷 カンファレンスのプレゼンは、いわゆるビジネスプレゼンテーションとは違って、個人の作品ですから、そういう気持ちで頑張ってます。それに、どうせなら楽しんでもらえたほうが自分としても嬉しいですから、どうすればもっと上手にやれるかなあ、というのは考えますね。自分でやってみれば他の人のやり方も、この見せ方はいいとか、ここは次にマネしようとか、そういう視点を持って話も聞けるようになりますし。
川井 たしかに大事ですよね。参加するという壁と自分で話すという壁と、あとコミュニティに入っていく壁と3つあると思うんですけどね。私が見て感じるのは、カンファレンスに行くと、お話が終わったあと、スピーカーのところに人が寄っていかないですよね? 目の前にいて片付けているのに、誰も挨拶にこない。これはエンジニアのカンファレンス特有だと思うんですよ。営業系だと行列ができちゃうんです。だから「なんでみんな名刺交換に行かないのかな〜」と不思議に思ってみてるんですけど、そこのところって文化が違うんだなと思いますね。この間、楽天のテクノロジーカンファレンス行ったんですけど、懇親会で三木谷さんがいたのに誰も絡まないんですよ。
角谷 それはやっぱりどう絡めばいいかわからなかったんじゃないですか? 空気を読みすぎてるというか。何者でもない自分が話しかけたら迷惑かなとか思うわけですよ。
川井 これが営業の人が集まるとですね、行列ができて三木谷さんに挨拶できないからあきらめて帰ろうかとなるんですよね。
角谷 プログラマとかは慮る気持ちが強すぎる人が多いのかもしれませんね。
川井 そうですよね。僕なんかずかずかと行っちゃって(笑)
角谷 そうなんですか(笑)
川井 でも今日は非常に参考になるいいお話を聞けました。他の方のお話だと、意味わかるけどできるわけないじゃんっていう話も結構あるんですけど、すごく等身大で、自分がどう生きたらいいかとか参考になるお話じゃないかなあと思いますね。
角谷 まあ、大したことないですから(笑)
川井 いやいや、そんなことないですよ。大事なのは、その中でどうしていくかというところだと思うので。
角谷 すごくなくてもやれることはどこにでもいっぱいあるんじゃないですかね。何をやるかは人それぞれですからわからないですけど、「自分なんて……」と思っていても、それでも何かしらやれるところはあるはずで。一人ひとりの力は大きくなくても、今はつながる手段が色々あって、ものすごい早さでつながっていく時代ですし。
川井 そうですね。それをうまくつかんで。
角谷 「チャンスをつかんでキャリアアップ!」と鼻息を荒くしなくても、いまは備えがある人にはいい時代なんじゃないですかね。ぼーっとしてると、ものすごい早さで置いていかれちゃいますけど、逆に備えがあって感極まるところがある人なら、自分で引っかけられるチャンスが必ずあると思います。
川井 そうですよね。わかりました。今日は大変いいお話をありがとうございました。
角谷 こちらこそありがとうございました。

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